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相続対策:遺言書を作成すべき10のケース

遺言対策10のケースのイメージ

 

 

1.遺言の必要性

遺言というと、自分が亡くなった後のことを想定することから、「縁起でもない」とか「自分はまだ元気だから大丈夫」と考える方がたくさんおられます。

しかし、遺言を作成しないまま亡くなってしまうと相続人に大きな負担をかける可能性があります。また、いざ遺言を作成しようと思っても、認知症を発症してしまう等、生前であっても有効に遺言が作成できなくなってしまう可能性もあります。

ここでは、もし遺言がないまま相続が発生してしまった場合の話や、遺言作成の必要性が高いケースについてお伝えしたいと思います。

 

2.遺言がない場合の相続

亡くなった方(「被相続人」といいます)が遺言を作成していなかった場合、被相続人の財産は、その法定相続人が法定相続分(法律で定められた相続分)に従って相続する権利があります。ただ、権利があるというだけで、単独で財産(預金や不動産等)の名義を変えることはできませんから、まず、相続人間で話し合いをする必要があります。

一般的には、話し合いをした上で、合意した内容について遺産分割協議書を作成するという手順で、誰がどの財産を取得するのかを決めることになります。

 

3.法定相続分と異なる割合で相続させたい場合

上記のとおり、遺言がない場合は、法定相続分に従って遺産の分割を行います。

しかし、被相続人が、法定相続分とは異なる割合で遺産を相続させたい場合は、遺言を作成しなければなりません。

 

3-1.配偶者や子供のうちの一人と同居していた場合(ケース1)

被相続人が、配偶者と同居していた場合、まず残された配偶者の今後の生活を考える必要があります。同居していた自宅が財産のほとんどを占めるような場合に、法定相続分に従って分割してしまうと、被相続人の死後、配偶者が自宅で生活を続けることができなくなる場合があります(※)。そのような理由から、配偶者に、法定相続分よりも多くなるとしても自宅の権利を相続させたい場合には遺言が欠かせません。

 

また、子供のうちの一人が自宅で同居しているような場合、残された配偶者と同居して世話をする子供に自宅の権利を相続させたい場合にも、遺言を作成する必要があります。なお、遺言には、法定相続分を超える財産を相続させる代わりに、配偶者の世話をすることを条件とすることを記載することも可能です。

※この点については、相続法制(民法の一部)の見直しを議論する法制審議会において、改正が進められているので、法改正にも注意が必要です。

 

3-2.内縁関係にある妻や認知していない子がいる場合(ケース2)

内縁関係にある相手がいる場合や、その方との間に、認知していない子がある場合も遺言が必要です。

内縁関係にある妻については、どれだけ長期間内縁関係にあったとしても、法律上、相続権が認められていません。ですから、遺言がない場合は、被相続人の財産を全く相続することができません

 

生前に、被相続人の所有する家で同居していたような場合、被相続人が亡くなってしまうと、相続人の全員の同意がない限り、その家に住む権利を失ってしまうのです。

同様に、認知されていない子も、被相続人の財産を相続する権利がありません。

遺言を作成することで、このように相続権がない者にも一定の財産を相続させることができますし、子については、相続人としての身分を取得させるべく、遺言によって認知をすることも可能です

 

3-3.息子の嫁や娘の夫に一定の財産を相続させたい場合(ケース3)

内縁関係にある方と同様、息子の嫁や娘の夫も、養子縁組をしていない限り、相続人ではないので、相続権がありません。

しかし、同居している息子の嫁が義父・義母の介護をしてくれていたような場合に、これに応えたいという気持ちを持たれる方も多いと思います。ただ、このような方に財産を残すには、遺言が必要不可欠です。

 

3-4.相続人がいない場合(ケース4)

相続人がいない場合、亡くなった方の遺産は、原則として国庫に帰属してしまいます。

しかし、相続人がいないとはいっても、生前にお世話になった方がおられるときに、その方に遺産を譲りたいと思われる方もおられると思います。また、特定の財団や企業などに遺産を寄付したいと思われる方もおられるでしょう。

このような場合にも、遺言によって、遺産の使い道を指定することができるのです。

相続人がいない方で大事にしているペットがいる方が、自分の死後ペットの世話をしてくれる人に、世話をしてくれることを条件に遺言で遺産を譲るというようなことも遺言であれば可能になるのです。

 

4.分割しづらい財産が遺産の中にある場合

遺産の中に分割しづらい財産がある場合も、遺言を作成しておいた方がよいといえます。

 

4-1.不動産を保有している場合(ケース5)

分割しづらい財産の代表は不動産です。不動産は、複数人で分けることがほぼ不可能なので(広大な更地であれば、分筆することもできなくはないですが)、通常は、相続した相続人が、法定相続分に応じて共有することになります。不動産が複数人の共有になってしまうと、共有者全員の同意がない限り、売却したり、担保に入れて借り入れをしたりすることができなくなってしまいます。また、誰が管理をするのかということも問題になります。

 

遺産の中に不動産がある場合、ある相続人が不動産を単独で相続し、他の相続人はその不動産と同等の現金を相続する、というように分けること(代償分割)ができれば、不動産の共有を避けることが出来ますが、遺言がないと、これを相続人の話し合いで決めなければならず、なかなか話し合いがまとまらないことが多いのです。

 

また、不動産が複数ある場合には、相続人Aはこの不動産を、相続人Bは違う不動産を、というように相続することで、共有になるのを避けられますが、やはり、どの不動産をどの相続人が相続するか話し合いで決めるのは大変です。これをあらかじめ遺言で指定しておけば、相続人間のトラブル防止にも繋がります。

 

また、遺言がない場合に、誰がどの不動産を相続するかを決めたり、不動産の代わりに現金を相続することを決めることになりますが、その際、その不動産の価値がいくらかを算定する必要があり、その評価にも時間や手間、費用がかかってしまう点も見逃せません。

 

ですから、財産の中に不動産がある方にとって、遺言は欠かせないといえるでしょう。

 

4-2.事業承継を伴う場合(ケース6)

被相続人が事業を営んでいたり、会社の経営を行なっていたりしたような場合にも、遺言がないと大きな問題が生じます。

 

まず、被相続人が事業を営んでいる場合、相続人のうちの誰がその事業を承継するのかということが問題になります。

遺言で、誰が相続するのかが指定されていれば問題ないのですが、遺言がない場合は、法定相続分で分割することになってしまい、事業の承継をめぐって相続人間で主導権争いが起こる可能性があります。そのようなことになってしまうと、事業自体が弱体化してしまうことは避けられません。

 

また相続人以外の者に事業を引き継がせる場合であっても、事業に供している財産(土地・建物・資金等)が被相続人名義であれば、相続人がこれを相続することになり、誰が相続するのかがやはり問題になります。

 

被相続人が会社を設立している場合は、会社の株式が相続の対象となりますが、これも事業を承継する方が単独で相続するのが望ましいことが多いといえます。

 

5.相続による争いが予想される場合

5-1.相続人間の仲が悪い場合(ケース7)

もともと仲のよい兄弟であっても、相続をきっかけに仲がこじれてしまうことは少なくありません。これまで表面化していなかった感情のもつれが相続をきっかけに顕在化して、相続争いに発展してしまうと、争いが長期化するのは避けられず、たとえ相続問題が解決しても、兄弟間に生じた溝は修復できないままということもあります。もともと仲が良い場合でも起こりうるのですから、兄弟間の仲が悪い場合はなおさらです。

 

ですから、遺言でしっかりと相続の内容を決めておくことで、兄弟間で無用な争いが起きないようにすることが大切です。

 

5-2.被相続人が再婚している場合(ケース8)

被相続人が過去に離婚し、離婚した相手との間に子供がいる場合は、その子供も相続人になります。しかし、離婚した相手との間の子供と、現在の家族(妻や子)とは交流がないのが一般的です。

 

このように交流がない者同士が、いざ相続の場面において話し合いをすると、スムーズにまとまらない場合が少なくありません。被相続人の死後に初めて過去に子供がいたことを知ったような場合はなおさらです。

 

ですから、このような場合も、無用なトラブルを避けるため、誰に何を相続させるのか、しっかりと遺言で明確にしておく必要があるでしょう。

 

5-3.相続人の数が多い場合(ケース9)

被相続人に子供がたくさんいる場合や、子供の中に既に亡くなっている方がおり、その妻や子(被相続人からみると孫)が相続人になる、というように、相続人の数がたくさんいる場合も、相続に関する話し合いがこじれる可能性があります。

 

前述のように、遺産分割の協議を行なう場合、相続人全員が同意しないと協議が成立しません。被相続人の子だけであればともかく、子が既に亡くなっていて、被相続人の配偶者が相続人になるような場合、血族でない者が分割協議に参加するため、すんなりとまとまらない場合が多いのです。例えば、被相続人の妻と母親の二人が相続人となる場合などで、嫁姑問題を抱えていると協議が難航してしまうことが多いのです。

 

高齢化に伴い、不幸にも親より子が先に亡くなってしまうケースもあります。そのような場合に備えて、遺言で相続の内容を確定させておくことも必要になってきたといえるでしょう。

 

6.相続税の納付が困難になる可能性がある場合(ケース10)

遺産の中に不動産が多く、現金が少ないような場合、相続人が相続税の支払いに困る場合があります。

そのような場合は、遺産の中の不動産を売却して相続税の原資を捻出する必要があるのですが、どの不動産を売却するかという点についても、遺言がないと、相続人全員の同意が必要になってしまいます

 

相続税の納付期限は、被相続人が亡くなってから10ヵ月以内となっていますから、その間に相続人全員の同意をとって、さらに売却まで済ませてしまわなければなりません。ただ、急いで売却しようとするとどうしても価格が安くなってしまいます。

 

遺言であれば、「~の不動産を売却して現金を~が相続する」というように、売却する不動産を指定することも可能なので、生前に相続税がどの程度発生するかを想定し、現金での納付が難しい可能性がある場合は、遺言によって特定の不動産の売却を指示することで(遺産分割方法の指定)、相続人が不利益を被らないようにすることも大切です。

 

7.最後に

このように、遺言が必要なケースは少なくありません。遺言は、遺言をする方が一生をかけて築き上げた財産をどのように承継していくか、という意思表示です。遺産については、まず、それを築いた方の意思を尊重すべきですから、これを明確な形で残しておくことが大切です。と同時に、相続開始後の相続人間のトラブルを避けるという目的も果たすことができます。

 

親族同士が相続に関して争うのは、誰の得にもなりません。人としての一生を締めくくるに際し、残された相続人間に無用な争いが起こることを事前防ぐことも、財産を残す者の使命といえるのではないでしょうか。

 

8.遺言作成はエクレシア法律事務所にご相談ください

埼玉県越谷市にあるエクレシア法律事務所は遺言作成のご相談を承っております。春日部市、川口市、吉川市、草加市、八潮市、三郷市、東京都足立区など周辺の地域の方もお越し頂いております。交通アクセスも新越谷駅・南越谷駅から徒歩3分程度で便利ですので、まずはお電話もしくはメールフォームよりご予約ください。

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