遺言の種類
遺言の種類には、大きく分けて、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。
※この2つの遺言以外にも、秘密遺言証書もありますが、実際にはほとんど利用されておりませんので、説明を省略します。
自筆証書遺言とは、メリット・デメリット
自筆証書遺言とは、遺言者が自筆によって全文・日付・氏名を記入し、これに押印をして作成する遺言書です。
遺言は、亡くなった方の遺産処分の方法についての遺志を伝え実現する非常に重要な書類ですから、法律によって厳格な要件が定められています。この要件に反する遺言は無効になりますので、自筆証書遺言を作成する場合は、注意を要します。
民法では、次のように規定されています。
民法第968条 1 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。 2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
従いまして、
①全文自書
②日付を自書
③氏名を自書
④押印
が絶対要件になります。
- 「全文」を自書しなければなりませんので、代筆は絶対にダメです。また本文だけではありません。すべてです。なお、2019年1月13日以降に作成された自筆証書遺言では、財産目録は、自筆でなくパソコンで作成されたものでもよいとされました。
- 「日付」は、○○年○○月○○日とはっきり書きましょう。平成28年10月末日は、31日と特定できますが、やはり、31日とはっきり書きましょう。間違えても、平成28年10月吉日などとしてはいけません。吉日と書いたら無効です!
- 「押印」ですが、実印は要求されていませんので、認印でも有効です。指印でも有効という判例もありますが、押された指印が遺言者のものかどうか確認できない事態も想定されますので、印鑑で押印すべきです。
- 「加筆訂正」ですが、遺言の中に間違って書いてしまった部分があり、その部分を訂正する場合、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない、とされています。この訂正方法を間違えると、訂正部分が無効になってしまいます。訂正が複雑になるようでしたら、そのページ全体を書き直したほうがよい場合もあります。
(メリット)
- 費用がかからない。
- 遺言の内容や存在を秘密にすることができる。
- 証人が必要ない。
(デメリット)
- 法律の定める要件を満たしていないと全て無効となってしまう。
- 家庭裁判所での検認手続きが必要である。
- 遺言を紛失する恐れがある。
- 遺言が偽造されてしまう可能性や死後遺言が発見されない可能性がある。
※改正相続法では、法務局における遺言書の保管制度が創設されましたので、デメリットの大部分が改善されました。
公正証書遺言とは、メリット・デメリット
公証役場において、遺言者が、公証人及び証人2名の前で遺言の内容を伝え、それを公正証書にしてもらう方法により作成します。公正証書は、公証役場においても保管されます。
(メリット)
- 家庭裁判所での検認手続きが不要。
- 偽造の可能性がなく、紛失しても公証役場で再交付してもらえる。
- 遺言の効力が争われにくい。
(デメリット)
- 費用がかかる。
- 証人を2人用意する必要がある。
- 公証人との打ち合わせが煩わしい。
お勧めする遺言の種類
遺言をするなら公正証書遺言で!
「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」のどちらを勧めるかと言えば、間違いなく「公正証書遺言」をお勧めします。なぜかと言いますと、公正証書遺言には、そのデメリットをはるかに上回るメリットがあるからです。
公正証書遺言では、証人を2人用意する必要があるとか、公証人との打ち合わせが煩わしいというデメリットがありますが、これも、そもそも初めから遺言作成を弁護士に依頼しておけば、すべて弁護士が解決してくれます。公正証書遺言のデメリットは、結局のところ、費用がかかるということにつきます。
一方、自筆証書遺言ですと、書き間違いにより無効になるという危険や、紛失という危険がありますが、公正証書遺言には、形式上の不備による間違えというものは、ほとんどありませんし、紛失ということもありません。このような安心感は、費用の負担というデメリットを補って余りあるものです。
※改正相続法では、自筆証書遺言のデメリットは、かなり軽減されましたが、それでも書き間違いによる無効の危険は致命的です。したがって、相続法が改正されたとしても、やはり公正証書遺言を勧めます。
遺言を考えている方は、是非、公正証書遺言で遺言を遺しましょう。