遺言者Aさんは、妻とは死別し子供がいなかったので、老後の面倒は、近所に住むBさんとCさんが見ていました。Aさんには、兄弟が2人いましたが、高校を卒業してからは、別れ別れとなり、約60年間音信不通の状態でした。Aさんには預金500万円ほどの相続財産がありましたが、これをBさんとCさんに2分の1ずつ分けるような遺言を作りたいということでした。
そこで担当弁護士は、自らを遺言執行者にして「預貯金について単独で名義変更、解約及び払い戻しをする権限を付与する。」との条項を備えた遺言書を作成しました。Aさんが亡くなったあと、担当弁護士が遺言執行者に就任して、兄弟にAさんの意思を説明し、BさんとCさんに無事、預金を分けることができました。
配偶者も子供も親もいない場合には、兄弟姉妹が相続人になります。この兄弟姉妹には遺留分がありませんので、遺言者は、兄弟姉妹を無視して自由に相続財産をそれ以外の人にあげることができます。この事例のように、財産をすべて相続人以外の人にあげてしまう場合には、遺産の処理をする遺言執行者を遺言で指定しておくことが大事です。
できれば、なぜ第三者に財産をあげるのか、その理由を遺言執行者に伝えておけば、いざ、遺言執行の段になったときに遺言執行者が相続人である兄弟姉妹に説明ができます。
なお、遺言書には、「預貯金について単独で名義変更、解約及び払い戻しをする権限を付与する。」との条項を付しておけば、遺言執行者が単独で銀行から預金を払い戻しできます。