○病気で遺言書を書けない場合の公正証書遺言作成
病気や体に障害があり、手を動かすことができない、文字を書くことができないため、遺言書を書くことができないと悩んでいる方へ。
あきらめるのは早いです。
公正証書遺言で遺言を残せます!
そこで今回は、病気や障害などがあって自筆で遺言書を書けない場合でも公正証書遺言によって遺言をする方法について、解説します。
1.自筆証書遺言ができないケース
遺言書の作成方法にはいくつかの種類があります。
代表的なものが、自筆証書遺言と公正証書遺言で、一般的に「遺言書」という場合、このどちらかを意味することが多いです。
自筆証書遺言とは、全文を自筆で書くタイプの遺言です。文字さえ書ければいつでもどこでも書くことが出来ますし、特に費用もかかりません。そのため、自宅にて自分で自筆証書遺言を書いて残しておくことも多いです。
ただ、自筆証書遺言は、全文を自筆で書かないと無効になるため、パソコンなどで文書作成することはできませんし、他の人に代書を頼むこともできません。
そこで、障害があって文字を自由に書けない人や病床の人、高齢になって手が震えて文字が書けない人などは、自筆証書遺言を書くことが難しいのです。
このことが原因で、身体が動かない人は「自分には遺言書を書くことはできない」と考えて、遺言書を残すことを諦めているケースがあります。
2.公正証書遺言なら身体が動かなくてもできる
障害がある人や病気で身体が動かない人の場合、自筆証書遺言の作成が難しいことが多いですが、その場合であっても公正証書遺言なら作成することができます。
公正証書遺言とは、公務員である公証人が公文書である公正証書として作成してくれる遺言書のことです。
遺言書を公証人が書いてくれるので、遺言者が自筆する必要がありません。
署名すらできない場合であっても、公証人が代理で署名することが認められています。
口がきけない場合には筆談などの方法で公証人とやり取りができますし、耳が聞こえない場合には通訳人による通訳によって公証人に意思を伝えることができます。
そこで、病床であっても手などの身体に障害があっても、意識さえはっきりしていたら公正証書遺言を作成することができます。
3.公正証書遺言にはメリットがある
公正証書遺言には、自筆で書かなくても良い以外にも多くのメリットがあります。
まず、公証人が法律の手続きに従って作成してくれるので、要式違反になって無効になるおそれがありません。自筆証書遺言の場合には、自己判断で作成してしまうので、法律が定めた方式に違反して無効になってしまう事例が多いのと比べてメリットがあります。
次に、公正証書遺言は、公証人が手続きにのっとって作成するという意味で信用性が高いです。作られた遺言書は公証役場において保管されるので、偽造や変造が行われる可能性もほとんどありません。
公正証書遺言が残されている場合、相続人らがそれを「偽造」「変造」「無効」などと主張して争われることが少ないですし、裁判になっても無効だと判断されてしまうおそれが低いです。
また、作成された遺言書が確実に公証役場で保管されるので、紛失するおそれがありませんし、自分の死後に確実に見つけてもらいやすくなります。
さらに一般的なメリットですが、遺言書がないと、相続人たちが自分たちで話し合って遺産相続の方法を決めなければなりません。そうなると、相続人同士で意見が合わない場合に、相続争いが起こってしまいます。もともと仲が良かった兄弟や親類であっても、相続トラブルをきっかけに絶縁状態になってしまうこともありますし、遺産分割調停や審判などがこじれて、相続問題を解決するためだけに数年以上の時間がかかることもあります。
ここで、遺言があると、遺言通りに相続をすすめることができるので、相続人らが自分たちで話し合って遺産相続の方法を決める必要がありません。ですから、遺言をすると、効果的に相続トラブルを多くの場合で避けることができるのです。
このように、公正証書遺言を作成しておくと、非常に効果的に相続トラブルを避けることができるメリットがあります。
4.公正証書遺言を作成する方法
それでは自分の身体が動かない場合に公正証書遺言を作成するには、どのようにすれば良いのでしょうか?
この場合、まずは公証役場に連絡をして、公正証書遺言を作成したいということを伝える必要があります。その上で、自分は身体が動かないので、公証人に出張してきてほしいと伝えます。また、公正証書遺言を作成する際には証人が2名必要ですが、自分で用意できない場合には、公証役場で紹介してもらう必要があります。
公正証書遺言を作成するときには、公証人と証人に、自宅や病院まで来てもらわないといけないので、日程調整の必要があります。
そして、公証人に対して、作成したい遺言書の内容を伝えなければなりません。
公証人は、遺言書の内容についてまでは相談に乗ってくれないので、遺言書の内容自体は自分で決めておく必要があります。
遺言書の内容を伝えたら、必要書類などの連絡を受けられるので、当日までに言われた書類を集めなければなりません。具体的には戸籍謄本や印鑑証明書、遺産内容を示す書類などが必要です。
遺言書を作る当日には、公証人と証人に来てもらって、遺言書を読み聞かせてもらい、間違いがないかどうかをチェックします。問題がなければ公証人が代署して遺言ができます。
公証人に出張してきてもらった場合には、公証人の旅費や日当がかかりますし、公正証書遺言作成にかかる費用自体も金額が加算されます。
具体的な費用の額は、遺産の総額によって異なります。たとえば遺産総額が3,000万円のケースでは、遺言作成費用34,000円、出張日当1万円(出張時間が4時間を超えると2万円になる)、病床執務手数料11,500円(出張による加算分)の合計で、65,500円程度の費用がかかります。
ただ、このような費用がかかっても、公証人に病院に来てもらって遺言書を作成出来るのは大きなメリットですので、身体が動かず自分で遺言書を作成出来ない場合には、是非とも公正証書遺言を作成しておくことをお勧めします。
しかし、これらの労力を考えると、後述しますが、遺言作成に長けた弁護士に依頼する方が大変楽です。
5.判断能力は必要
身体が動かない場合にも公正証書遺言によって遺言書を作成することができますが、この場合認知症などの場合には問題が起こるケースがあります。
遺言をするためには、「遺言能力」が必要とされます。たとえば、未成年者の場合、15歳以上になると遺言能力が認められますが、14歳までは遺言能力を認められていません。
同じように高齢者などのケースでも、有効に遺言を行うためには遺言能力が必要なのです。
そこで、公証人に出張してきてもらって公正証書遺言を作成したい場合には、身体は不自由であってもかまいませんが、最低限の判断能力が必要です。
たとえば、認知症などで判断能力が大きく低下している場合には、遺言能力が無いとされて、公正証書によっても遺言ができないケースがあります。
このように、遺言能力が認められるかどうかについては個別のケースごとの判断が必要ですので、自分たちではわからない場合には、専門家に相談することが必要です。
6.弁護士に相談しよう
以上のように、病気や障害などが原因で身体が不自由な場合でも、遺言能力がある限り、公正証書遺言によって遺言書を残すことができます。
ただ、そのためには、まずはどのような遺言書を作成するか(遺言内容)を決めなければなりませんし、遺言書作成の手続きの進める際にも戸惑うことが多いでしょう。公証人にお願いするとしても、準備は自分でしなければなりません。
そこで、公正証書遺言を作成したい場合には、専門家である弁護士に手続を依頼することがおすすめです。
特に身体が悪い場合、自分でいろいろと動いて書類や情報を集めたりすることができないので、弁護士によるサポートが役に立ちます。
弁護士に依頼することで、戸籍謄本などの取り寄せから遺言内容の検討までしてもらえるので、大変助かります。
今、身体が不自由だけれども遺言書を残したいと考えている人や、親族に身体が動かないけれども遺言書を作成したい人がいる場合には、まずは、遺産相続問題に強い弁護士に相談をするところから始めましょう。
○病床での遺言相談は、エクレシア法律事務所まで
埼玉県越谷市のエクレシア法律事務所は、相続・遺言関連の事案を多数扱い、解決してきた実績がございます。病床での遺言作成も多数経験しております。
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