遺産相続の事前対策として、遺言書は最も効果的と言えます。
ただし、遺言書はただ書けば良いというわけではありません。記載内容が適切でないと、当初予想していなかったような結果を招いてしまう可能性もあります。
そこで今回は、遺言書を作成する際のポイントについて解説したいと思います。
■プロが教える遺言書作成における5つのポイント
ポイント1:表現は「はっきり」させる。曖昧にしないこと。
実際に見つかった遺言書でトラブルとなりやすいのが、その表現方法に関する問題です。代表的なところで言えば、遺言書の日付を「○年○月吉日」などといった曖昧な表現で記載すると、その遺言書は無効となってしまいます。
このように、遺言書は記載する際の表現方法をはっきりと断定する必要があるのです。分かりやすく言えば、誰に、なにを、どれだけ相続させるのかをはっきり記載しておかなければなりません。
例えば、預金を相続させたいのであれば、銀行名、支店名、なども特定して記載するのが確実です。
ポイント2:財産の内容だけではなく「どこにあるのか」も書く
相続財産には、現金、預金、不動産、株式、有価証券、金、宝石類、美術品などさまざまなものがあります。例えば、これらの財産の分割方法を事細かく遺言書に記載したとします。
遺言の内容としてはそれで問題ありませんが、ものによってはその財産が「どこにあるのか」まではっきりさせなければ、相続人がその財産を見つけられないというケースが出てきます。
例えば、現金、金、宝石類、有価証券などについては、被相続人だけが知る場所に保管されているケースもあるため、それらの保管場所を必ず書き記す必要があります。ただ、これらも遺言書の内容に盛り込もうとすると、遺言書が長編になってしまうため、そのような場合は「財産目録」という相続財産の一覧のようなものを別途作成して一緒に保管しておくと良いでしょう。
ポイント3:遺言書は保管場所が重要
遺言書はそれだけで、相続発生時に相続人の運命を左右しかねない重要な意味をもつ書類となります。そのため、一度作成したら死ぬまで他人にバレないよう、厳重に保管しなければなりません。自筆証書遺言の場合は、自分自身で気軽に作成できる分、保管についても自己責任となります。そのため、家族の目につくところに保管してしまうと、場合によっては誰かにその内容を改ざんされたり、破棄、隠蔽されたりしてしまうという可能性もあります。
そのため、もしも遺言書を作成したら、銀行の貸金庫などに保管するか、相談した弁護士に費用を払って保管してもらうと良いでしょう。
ポイント4:遺言執行者を指定する
遺言執行者とは、遺言書の内容を実行する人のことで、相続が発生した際に相続人全員を取り仕切る立場になります。遺産分割でトラブルを起こさないようにするためには、家族以外の第三者にこの遺言執行者を依頼して、遺言書で指定しておくことがとても効果的です。
遺言執行者は、通常弁護士などの専門家に依頼をするのが一般的です。そのため、遺言書の作成とセットで遺言執行者も弁護士に依頼すると一番スムーズでしょう。弁護士を遺言執行者に指定すれば、遺言書の保管についても一緒に対応してくれるでしょう。
ポイント5:遺言書を変更したい場合は、必ず遺言書で行なう
一度遺言書を書いた後にその内容を変更したくなった場合はどうすれば良いのでしょうか。自筆証書遺言だと仮定すると、以下のようになります。
1:遺言書の内容全てを撤回したい
この場合は、自分自身で保管している遺言書を破棄すれば大丈夫です。
2:遺言書の内容の一部を変更したい
例えば、「1億円相続させる」と遺言書にいったんは書いたが、後日やっぱり5000万円に変更したくなった場合は、その遺言書自体に訂正印を押して書き直すのではなく、別途新しい遺言書を作成してその部分を上書きする必要があります。
つまり、以下のようになります。
「○年○月○日付けの遺言書に記載のある「1億円を相続させる」の部分について金額を5000万円に変更する」
といった感じになります。
遺言書を書いているその場で書き間違えた場合は、その遺言書自体に訂正印などで修正することもありますが、後日になって変えたい場合は、必ず遺言の方式によって行なわなければなりませんので注意しましょう。
■財産の「書き漏れ」に対するリスクヘッジについて
自分自身ではすべて調査したと思っていても、自分の死後にそれ以外の財産が出てくる事もあります。例えば、自分が遺言書を書いた後に取得した財産などについては、その遺言書に載ってこないため、これについて全く遺言書で触れていないと、その部分についてだけ別途遺産分割協議を行なわなければならなくなってしまいます。その部分の財産価値が高ければ、相続トラブルも発生しやすくなり遺言書を作成した意味が薄れてしまいます。そのため、遺産分割方法を指定する目的で遺言書を残す場合は、必ずこの点について事前にリスクヘッジをしておく必要があるのです。
具体的には、以下のような文言を最後に挿入すると良いでしょう。
「残余の財産については、すべて○○に相続させる」
または
「その他一切の財産は○○に相続させる」
こういった文言を最後に挿入することで、遺言書に記載されていない財産についても遺産分割を指定することが可能になります。
■公正証書遺言と弁護士の重要性
このように、遺言書を作成する際にはいくつかの注意点があります。これらの注意点はどれか一つでも漏れていると、せっかく残した遺言書が用をなさなくなってしまう可能性もあります。
そのため、遺言書を作成する際には、できれば次のいずれかの方法をとることをおすすめします。
1:弁護士に相談して自筆証書遺言を作成する
自筆証書遺言については、通常の法律相談などでも弁護士から適切なアドバイスが聞けたりするため、費用は最小限に抑える事ができます。弁護士の監修が入るため、完成した遺言書の内容については安心できるでしょう。
2:公正証書遺言を作成する
公正証書遺言は公証役場の公証人(元裁判官など)が作成してくれるため、記載内容にミスが出る事はありません。ただ、事前に公証人との打ち合わせが必要になるなど、面倒な点も多くなります。
また、相続財産に応じて一定の手数料がかかります。
3:弁護士に依頼して公正証書遺言を作成する
費用は一番かかりますが、このやり方が最も確実なやり方となります。
弁護士報酬と公正証書の手数料がかかりますが、その分最も確実な遺言書が作成でき、なおかつ、本人にかかる労力も最小限に抑える事ができます。また、同時に弁護士に遺言執行者にもなってもらえば、相続発生後の遺産分割協議をスムーズに進める上でも有効です。
■まとめ:遺産分割の生前対策に重要なキーワード
このように、遺言書を残す上では「公正証書遺言」と「弁護士」というのは非常に重要なキーワードとなりますので、遺言書を作成する際には、必ずこの2点を覚えておくようにしましょう。また、「遺言執行者」についても触れました。親族の中からではなく、弁護士に依頼することで、よりトラブル無くスムーズに遺産分割を行うことができるでしょう。
遺言書の残し方や、遺言書に関連するトラブルは、残された相続人の方々の人生をも左右することがあります。せっかく生前対策をするのであれば、不備の無い遺言書を残したいところです。
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